「歩いているときにつまずいた」「階段でふらついた」。
こうした日常の小さな変化を、職場ではどのくらい把握できているでしょうか。
バリュスポでは、製造業・自治体職員・警備・ビルメンテナンスの身体機能測定参加者を対象に、事前問診の回答を集計しました。対象は6企業・団体、重複を除いた514名です。
今回は、その結果から、職場の転倒対策を考えるうえで注目したいポイントを紹介します。
このデータでわかったこと
- 約4人に1人が、最近4週間につまずき・ふらつきを経験。
- 最近つまずき・ふらつきがある人では、過去1年に転倒した人の割合も高い。
- 肩・腰・脚のつらさが重なる群ほど、ヒヤリハット経験割合が高い傾向。
対象は測定参加者514名。日本の労働者全体の傾向や、将来の転倒を予測した結果ではありません。
約4人に1人が、直近4週間につまずき・ふらつきを経験
直近4週間に「つまずき」または「ふらつき」を経験した人は、有効回答者495名のうち123名、24.8%でした。
本記事では、この経験を「ヒヤリハット」と呼びます。会社に報告された件数ではなく、問診で本人が回答した経験です。
つまずき・ふらつきを経験
(495名中123名)
50歳未満と比べて
年代別に見ると、50歳以上では28.2%(109/386名)、50歳未満では12.8%(14/109名)。今回の参加者では、50歳以上の経験割合が約2.2倍でした。
事故件数だけでは見えにくい日常の小さな変化を、問診から把握できる可能性があります。
ヒヤリハット経験がある人は、過去1年の転倒経験割合も高い
最近つまずき・ふらつきを経験した人と、経験していない人。それぞれに「過去1年間に転倒したことがあるか」を尋ね、割合を比べました。
表が画面に収まらない場合は、横にスクロールできます。
| 直近4週間のヒヤリハット | 過去1年間に転倒を経験した割合 |
|---|---|
| あり | 11.9%(14/118名) |
| なし | 1.4%(5/370名) |
※「14/118名」は、回答者118名のうち14名が転倒を経験したという意味です。両方の設問を集計できた488名で比較しています。
ヒヤリハット経験がある人では、転倒経験の割合が約8.8倍でした。倍率は、丸める前の数値から算出しています。
「約8.8倍」は、過去の転倒経験を比べた数字です
最近つまずき・ふらつきがあった人では、118名中14名が過去1年に転倒していました。なかった人では、370名中5名でした。この二つの割合を比べたのが「約8.8倍」です。
例えば、半年前に転倒し、最近もつまずいた人も含まれます。転倒とつまずきのどちらが先だったかを追跡した調査ではないため、「つまずいた人が、その後どれくらい転倒するか」はわかりません。
この数字は、今後の転倒確率ではなく、職場環境や体の状態を確認する手がかりとして読み取ります。
今回示されたのは、二つの経験に関連があるということです。つまずき・ふらつきの声を、職場環境や本人の状態を確認するきっかけとして扱うことが考えられます。
「自社でも把握したい」と感じた方へ
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対象人数・実施方法を相談したい方はこちら →肩・腰・脚のつらさが重なる人ほど、ヒヤリハット経験割合が高い
肩・腰・脚の3か所のうち、問診で最も強い選択肢「つらい」を選んだ部位が、いくつあるかでグループに分けました。「0部位」は、この選択肢を選んだ部位がない人で、体に不調が全くないという意味ではありません。
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| 「つらい」と回答した部位数 | ヒヤリハット経験割合 | 仕事の出来の自己評価・平均 |
|---|---|---|
| 0部位 | 18.7%(53/284名) | 81.4% |
| 1部位 | 25.5%(35/137名) | 79.4% |
| 2部位 | 44.6%(25/56名) | 71.0% |
| 3部位 | 55.6%(10/18名) | 66.0% |
※ヒヤリハットの人数と、仕事の出来の平均を計算した人数は異なります。例えば3部位の群は全体で22名ですが、ヒヤリハットを集計できたのは18名です。
「仕事の出来」は、病気やけががない状態の自分を100%として、過去4週間にどのくらい仕事ができたと感じたかを答えたものです。会社による人事評価や、実際の生産量を測った数字ではありません。
今回の集計では、つらい部位が多い群ほど、ヒヤリハット経験割合が高く、仕事の出来の自己評価が低い傾向が見られました。0部位と3部位では、仕事の出来に15.4ポイントの差がありました。
ただし、3部位の群は全体で22名と少数のため、参考値として読む必要があります。また、体のつらさがヒヤリハットや仕事の出来の低下を引き起こしたと断定することはできません。
安全衛生と健康管理の双方から、体のつらさを確認する意味を考えさせる結果です。
「通常の歩行中」「階段・段差」にも目を向ける
ヒヤリハットを経験した123名に発生場面を複数回答で尋ねたところ、場面の選択数を合計した175件のうち、「通常の歩行中」と「階段・段差」が合わせて97件、約55%を占めました。
1人が複数の場面を選べるため、123名の回答が合計175件になっています。約55%は、選ばれた場面のうち「通常の歩行中」「階段・段差」が占める割合です。事故の発生件数や人数の割合ではありません。
特別な作業だけでなく、日常の移動場面も確認対象になります。床や通路、段差などの状況と、本人が感じているつまずき・ふらつき、体のつらさを合わせて確認することが、対策を検討する入口になります。
なお、この問診だけでは、発生原因が職場環境と身体の状態のどちらにあるかは判断できません。
職場での第一歩は、小さな変化を聞くこと
今回の結果を踏まえると、職場で確認したいのは次の三つです。
聞き取った内容をもとに、現場の状況を確認し、必要に応じて身体機能測定などにつなげることで、対策の検討材料を増やせます。
バリュスポでは、問診と身体機能測定を組み合わせ、参加者へのフィードバックや運動指導、職場全体の傾向把握を支援しています。今回の問診結果も、今後、身体機能の測定値と照らし合わせて検証を進めていく予定です。
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対象人数・実施方法を相談したい方はこちら →対象は6企業・団体の身体機能測定参加者514名。同一企業・団体内で氏名・性別が一致する再回答21件を除き、最新の回答を採用しました。50歳以上が398名(77.4%)を占めます。
設問ごとに未回答等を除いているため、有効回答数は異なります。「仕事の出来」は回答者のみの平均です。
本集計は測定参加者の自己申告による横断データであり、日本の労働者全体の発生率や因果関係、将来の転倒予測精度を示すものではありません。また、転倒経験をそのまま労災認定件数として扱うことはできません。